夢ばかり見ている

起きたら寝汗をぐっしょりとかいていた。疲れているから悪い夢ばかり見て、悪い夢ばかり見るから疲れるのだろう。熟睡出来る日がどうにも少ない。


お母さんの余命が伸びる夢を見た。

夢の中でさえわたしはお母さんの命が残り僅かなまま死んでしまうことを知っていて、それでもなお、私「お母さんの肌つるつるになったね」母「この下はボロボロだよ」という会話をしていた。何故つるつるかなんて知っている。癌に侵されて肌が張るからだ。嫌になるくらい無駄にリアリティーのある内容だ。それからはお母さんや私たちや町の人と正体不明の敵との殺し合いが始まった。死んでしまうことなんて分かっているのに、不毛な争いだ。
夢から醒めたら汗びっしょりで身体がとても痛かった。具合が悪いから見たのだろうか。それとも命日が近いと考えていたからだろうか。端的に言えば、悪夢だった。

楽しい思い出もたくさんあるだろうに、記憶や体験として根強く、取り去れないほどに強烈に残っているのは闘病生活末期でのことと、お母さんが死んだ日のことなんだろう。そればかりが強くてその後数ヶ月、いや2年くらい家での記憶がないし、何度も何度も夢に見る。死んでしまったひとや愛犬タロウの夢を見ると身体と頭が支配されたように重くなる。記憶は薄れていくのに、枯れない涙を流し続けて心が千切れるようだった壮絶な辛さが消えない。


もうすぐ、丸8年だ。


早すぎて目眩がする。命日の話をお父さんにするのを避けていたのですが、それは家族の中で覚えているのがわたしだけだったらショックで立ち直れなかったからです。わたしが繰り返し悪夢にもがいている横で、父は新しい人生をスタートさせるのがとても早かった。忘れるスピードも吹っ切るスピードも早いんだろうと思っていたし、だからこそ命日を「なんの日?」と言われたらまた心に重傷を負いそうでいやだったのだ。だけど、覚えていてくれていた。良かった。